レジリエントな組織文化を築くための5つの出発点
レジリエントな組織の定義
レジリエンス(回復力・適応力)は、人間だけが持つ性格特性ではありません。
グループやコミュニティ、組織もまた、事業を確実に成功させたり継続させたりするために、レジリエントな文化を学び、発展させることができます。
では、レジリエントな組織とは、正確に言うとどんなものなのでしょうか?
多くの情報筋は、レジリエントな組織を「問題発生時にそれを予測し、計画を立て、対処するビジネス能力」を持つ組織と定義しています。
ガートナーが「事業継続マネジメントのための2020年戦略ロードマップ」という報告書に記載した定義を見てみると、レジリエントな組織は、柔軟性と持続可能性を備え、変革に対応できる組織、であるとされています。
レジリエントな組織とは、事業に混乱が生じても復旧して成功する組織のことです。
なぜならレジリエントな組織は、(優れたリスク管理で)混乱の影響に耐え、混乱に直面したときにも適応力や弾力性、持続可能性を備えているからです。対応、復旧、および予備計画こそが、レジリエンスの基盤なのです。
※参照:ガートナー「事業継続マネジメントのための2020年戦略ロードマップ」
レジリエントな文化の重要性と特徴
今日私たちは、ますます激しく、急速に変化している市場で働いています。
組織がこうした変動性が高く複雑な環境で成功するためには、特に危機的な状況下で、今まで以上の適応力と俊敏性を備えていなければなりません。
組織が失敗する主な要因の一つは、従業員のストレスレベルの上昇です。ストレスレベルが上昇すると、従業員の成績や生産性、士気の低下、職場での人間関係の悪化につながってしまう恐れがあるからです。
さらに、組織のレジリエンスを構築することは重要です。なぜならレジリエンスは、長期にわたって競争優位性を保つ能力を示しているからです。
このレジリエンスは、極めて優れた業績を残すと同時に、効果的なイノベーションを進めていくことで構築できます。
レジリエンスを構築することで、その企業はビジネス目標を市場の激しい変化に合わせられるということも示せるでしょう。
前述したように、レジリエントな組織の基盤となるのは、混乱が生じたときに迅速に対応し、復旧し、予備計画を立てる能力です。
さらに詳しく見ていくと、レジリエントな組織には主に以下で記した特徴があり、これらは事業の持続可能性と継続性のための計画を立てる際、優れた指針にもなります。
レジリエントな組織は次のことが可能です。
- 組織構造の構築と適合 - 正確かつタイムリーで回復力のある意思決定プロセスを持ち、課題に直面したときに、組織を分散して運営しつつも、独立した物理的およびデジタル的操作システムで運営できるようにします。
- 安全の確保 - レジリエンスは、組織が変化の真っ只中でリスクを継続的に管理し、軽減するのに役立ちます。
- 従業員のメンタル管理 - 常に変革や変化にさらされていると、従業員の不安とストレスレベルが高まってしまいます。レジリエンスを文化に組み込み、リーダーたちが従業員のメンタル管理に対する献身的な姿勢を示すことで、組織は彼らの健康と安定性を確保できます。
- 多様性と能力のある従業員の育成 - 組織に強力なリーダーシップとレジリエントな文化があれば、競争力と成功を築くために共に働き、強いつながりを持ち、協力的で創造的な従業員チームを確立する力を持てるようになります。
- 学び、発展、成長 - レジリエントな組織は、適応力や弾力性、柔軟性を長いスパンでつけていくために、物理的インフラとデジタルインフラの両方に投資します。
レジリエントな組織を構築する
レジリエントな組織の特徴を見てきましたが、「そのような文化を構築するにはどうすればいいのだろう?」と疑問に思うかもしれません。
過去数十年間にわたって、複雑な適応学習システムと、それが変化する環境にうまく適応する方法について、多くの研究が行われてきました。
研究論文「レジリエントな組織を構築する」の中で、ディーン・ロブ氏は、レジリエントな組織というのは、企業の構造やスキル、そして文化という基盤の上に、業績向上システムと適応システムを連携させて、能動的かつ意識的に構築していくものだと述べています。
レジリエントな組織を構築することは、長期的な変革プロセスです。
ここでは、デジタルワークプレイスを活用してレジリエントな組織文化を構築するためのアイデアを紹介します。
1. 効果的なリーダーシップ
組織文化を形成する上で最も重要な要素の一つが、強力なリーダーシップです。レジリエントな文化は、従業員のことを理解してサポートしてくれる、仕事熱心なリーダーから始まります。
もし経営陣がリーダーシップに対してサポートしなければ、従業員エンゲージメントが低下するリスクが高まり、結果として企業文化が弱体化してしまいます。
リーダーと従業員のつながりを強くする方法は、上下方向と水平方向のバランスのとれたコミュニケーションを提供することです。
これは、たとえばイントラネットで専用のリーダーシップコーナー(ページ、グループ、コミュニティなど)を作成するなど、デジタルワークプレイスを通じて実現できます。
このようなリーダーシップコーナーは、企業情報を共有する場として活用できると同時に、従業員が管理職と直接やりとりすることもできます。
これにより、同じオフィスで働いている場合でも、異なる時間帯で働いている場合でも、リーダーと従業員との間に強いつながりが生まれます。
レジリエントな文化を持つ組織のリーダーは、従業員エンゲージメントを効果的に高めることに対して個人的な責任を負うべきであり、変革期にはチームを守るために難しい決断をしなければなりません。
2. 透明性とコミュニケーション
リーダーにサポートしてもらったら、組織は透明性を高め、当然それをあらゆる社内コミュニケーションに適用する必要があります。
レジリエントな文化は、コミュニケーションが組織内での行動を促す強力なツールであると理解しており、その理解があることで、倫理や価値観についてのオープンな議論が生まれるのです。
リーダーだけでなく、ほかのステークホルダー(利害関係者)もこのアプローチを取り、オープンなコミュニケーションを通じて責任を促進できます。
おそらく、透明性のある社内コミュニケーションのための最も効果的なツールのひとつは、社内イントラネットプラットフォームでしょう。
イントラネットは唯一の情報源として機能するため、特に大変で先の見えない時期には、全従業員がそこから発信される情報を信頼することができます。
3. 安全で安心な職場のコミュニティ
職場というのは、変化や混乱が生じているときは特に、ストレスが多く疲れる場所になりがちです。
従業員は仕事とプライベートを分けるように言われ、職場では感情を表さないように求められます。
しかし、たとえばリモートワーカーの場合、家庭と仕事との境界線がより曖昧になります。
従業員を独りにさせないように、従業員同士の交流が盛んで安全な職場環境を作りましょう。
従業員同士がつながりを持ったり、協働したりしているのは、常に職務上のコミュニティ内だけです。
そこで、仕事以外の関心事について情報交換したり、ほかの従業員と交流を深めたりするための専用スペースを設けてみるのはいかがでしょうか?
人材・開発チームが従業員の協働向上をサポートするのに使うデジタルツールには、さまざまなものがあります。
あとは、従業員のニーズに合っていて、職場がより快適だと感じてもらえるようなツールを選ぶだけです。
4. ナレッジマネジメントにおけるイノベーション
レジリエンスは、業績と実行によって促進されます。
しかし、イノベーションに適応できなければ、どうやって高い業績を達成できるのでしょうか?
ナレッジマネジメント(知識を活用した経営手法)は、レジリエンスを構築するうえで非常に重要な柱ですが、多くの組織はイノベーションをうまく統合することができていません。
ナレッジマネジメントの成果は測定しづらいものであり、組織はもっと目に見える要素に力を注いでしまいがちです。
しかし、変化するタイミングで基盤に亀裂が入ると、変革プロセス全体が停滞してしまう可能性があります。
テクノロジーが進歩すると、俊敏でオープンなナレッジマネジメントシステムを設計するためのチャンスが多くなります。
クラウドテクノロジーを利用すれば、知識共有がより簡単になり、より多くの従業員に情報を広めることができ、同時に何世代にもわたって知識を安全に保存できます。
変化のプロセスを簡単にし、組織を激動の時代に備えさせることができるようなイノベーションに対して、投資することを検討してみてください。
5. 複雑性と説明責任
組織のレジリエンスがほぼ毎日試されるわかりやすい事例はグローバル化ですが、これは必ずしも悪いことだとは限りません。
今日、企業の多くは複数の時間帯や地域、部門にまたがって事業を展開しています。こうした複雑な組織を効果的に運営するには、チーム全体で責任を共有しながら、協働と情報共有を強化する必要があります。
そのためには、国際的なビジネスを集中化したいと考えている企業をサポートするために構築された、デジタルコラボレーションスイートとツールを導入しましょう。
レジリエントな文化は、共有責任と権限が与えられたチームのメリットを理解しています。
このことは、明確な理解と強い説明責任の意識を確立することで、従業員を危機的状況に備えさせることができます。
レジリエントな文化を築くのには時間がかかりますが、その見返りはあらゆる企業にとって莫大なものとなります。
それを得るまでに次の課題に直面してしまうかもしれませんが、最も重要なのは、どんな状況にも適応する方法を学ぶことだということを忘れてはいけません。
そうすれば、真にレジリエントで持続可能な組織になることができます。