効果的な従業員ジャーニーマップを形作る10のステップ
従業員ジャーニーとは?
従業員ジャーニーとは、従業員が企業と関係を持っている間に得るすべての経験を指します。
つまり、採用プロセスが始まってから退職するまで (自発的な離職か否かにかかわらず) の期間のことを指しています。
従業員ジャーニーには、求職者として応募フォームを書き上げることから、従業員として退職面談を受けるに至るまで、従業員と企業との関係におけるあらゆる段階が含まれています。
従業員ジャーニーでは、次のようないくつかの重要なステップを踏みます。
- 採用と雇用
- 採用後のオンボーディングプロセス
- 従業員エンゲージメントの向上
- 従業員の育成
- 従業員のキャリアアップ
- 退職時のサポート
従業員はこのプロセスのどこかで、雇用主との関係において重大な局面を迎えます。
こうした経験は、雇用主や職場に対する従業員の考えに強く影響を与えます。
従業員の多くが、初出勤した日のことをよく覚えています。
初日はワクワクしており、これからどんなことができるのか楽しみにしているものです。
しかし同時に、人との出会いや新しいやり方を覚えることに、多少は不安を感じるもの。
けれども時間が経つにつれて慣れていき、「新人」ではなくなり、普通の従業員の一人として馴染んでいくことでしょう。
良いスタートを切ることが雇用主と従業員にとって重要な理由
雇用主と従業員の関係がスタートするとき、双方ともに良い関係を築きたいと思っています。
しかし、従業員が入社してから数日間、数週間のうちにポジティブな経験をしなければ、そのときに抱いたネガティブな感情はその後も残ってしまいます。
Society for Human Resource Management(SHRM)によると、時給制で働く従業員の最大半数が、入社後4ヶ月以内に退職してしまうそうです。
これは中途採用者にも言えることで、彼らは入社後18ヶ月以内に退職してしまう傾向があります。
この数字は、企業における従業員ジャーニーが、人材確保の成功にとって非常に重要であることを示しています。
従業員エクスペリエンスジャーニーマップとは?
従業員エクスペリエンスジャーニーマップは、従業員と企業の関係を形作るのに重要とされるステージや主な経験をたどるために使われます。
このマップは各ステージを視覚的に示せるように、時系列順の図表で作られています。
従業員エクスペリエンスジャーニーマップの作成は、企業の価値観や目標、またそのプロセスを表現するためのユニークな方法です。
しっかりとした従業員エクスペリエンスジャーニーマップを作れば自社の価値観を反映でき、職場において強靭な文化を築くのに役立ちます。
従業員ジャーニーマップに含めるべきステップ
従業員ジャーニーマップのテンプレートを作成するなら、以下で紹介するステップを含めるといいでしょう。
なお、従業員ジャーニーの各ステージごとに、次のことを確認するようにしてください。
- 従業員が達成しようとしていることは何ですか?
- 従業員はどのような感情を抱いていますか?
- 従業員はどのような困難や課題に直面していますか?
1. 採用候補者の発掘と採用
雇用主との関係における従業員ジャーニーは、採用から始まります。
採用候補者は通常、あなたの企業とどのようにコンタクトを取っているでしょうか?
- あるポジションの求人を掲載している看板が彼らの目に入りますか?
- オンライン求人広告が、その職にふさわしい応募者を集めるのに役立っていますか?
- 就職フェアや大学でのリクルート活動は、新卒や経験が少ない人を採用するのにどれくらい役立っていますか?
- 求職者はウェブサイト、もしくはLinkedInやX(旧Twitter)といったソーシャルメディアを通じて応募していますか?
- 紹介制度を設け、現従業員があなたの企業に合った人材を紹介してくれた場合に、紹介料を出していますか?
求職者があなたの企業に興味を持った場合、簡単で便利なプロセスで応募できますか?
彼らが面倒くさいと感じることなく、履歴書をアップロードできるようになっていますか?
彼らがそのポジションにふさわしいと思う理由を記すスペースが、応募フォーム上に十分取られていますか?
2. 入社前段階
これは、採用候補者が正式に内定を受け入れたものの、まだその企業で働き始めていない段階のことです。
この段階では、前の企業でプロジェクトを完了させようとしている最中の人もいるかもしれません。
また、退職前に一定の退職予告期間を必要とする企業もあります。このように、新規採用者が「前の」企業に対して責任を果たそうとしているのは良い兆候だと考えましょう。
なぜならそれは、その人に責任感があり、前の企業を円満退職したいと考えていることを表しているからです。
この入社前の段階で、彼らとコミュニケーションをとり始め、歓迎されていると感じてもらうためのプロセスをスタートできます。
チームが新規採用者のエンゲージメントを高めるために必要なのは、単に「歓迎」する旨を書いたメールを送ることなどではありません。
彼らを企業のソーシャルネットワークで紹介することで、チームメンバーと交流してもらいましょう。
また、社内の最新情報を入手できるように、社内報の登録の仕方を教えてあげてください。
3. オンボーディング(新人教育)段階
オフィスワーカーでもリモートワーカーでも、新規従業員が仕事を始める際は、スムーズでポジティブな移行を期待しますよね。
オンボーディングは初出勤日だけでなく、入社後数週間や数ヶ月間におよび、従業員ジャーニーマップの作成において重要な段階だと言えます。
オンボーディングジャーニーマップはどのように作成していますか?彼らの移行を成功させるため、必要なステップを取り入れましょう。
まず、彼らが初出勤時に放っておかれるようなことがあってはなりません。
そして、従業員エクスペリエンスプラットフォームには事前にログインしておき、すぐ使用できる状態にしておく必要があります。
彼らはそこから、自分たちが記入する必要のある人事部のフォームにアクセスします。
従業員がリモートワークをしている場合は、ビデオチャットをスケジュールして、新メンバーと顔を合わせられるようにしましょう。
オフィスワーカーは主な従業員に直接紹介すべきです。新メンバーには、研修のスケジュールと初出勤日に行ってほしいことを教えてあげましょう。
4. 給与規定や福利厚生規定
新規従業員が必ずたずねてくる質問の1つが、「給料日はいつですか?」もしくは「どのくらいの頻度で給料がもらえますか?」というものです。
給与について疑問を持つのは当然のことであり、期日通りに支払われるかどうかは誰もが確認する必要があります。
また、企業によって給料日が異なる場合があるため、新規従業員は給与を受け取るまでの間、一時的に資金繰りの問題が起こる可能性もあります。
したがって彼らは金銭管理のために、企業の給与規定や福利厚生規定について知っておかなければなりません。
以前は、人事部の担当者に電話して確認するのが一般的でした。
しかし現在では、社内イントラネットから直接、給与規定や福利厚生規定にアクセスできます。
また、人事部への問い合わせメールやメッセージを減らすために、よくある質問リストを掲載するという方法もあります。
5. 継続的な学びの機会
雇用主は、従業員が入社してからも学び続けてほしいと考えていますよね。
実は従業員も、継続的に学ぶことに対して関心を持っています。
しかし残念ながら、雇用主の多くはこの分野で失敗しています。従業員に何を与えればいいのか、研修や彼らの成長をどのように構築していけばいいのかわからないからです。
そんなときは、どんな分野の研修に関心があり、どんな方法で受講したいか、従業員に聞いてみましょう。「ランチアンドラーン」を行ってほしいという人もいれば、(オンラインまたは対面で)個別にコースを受講したいという人もいます。
もしくは両方とも行ってみるのもいいかもしれません (ランチタイムラーニングプログラムに興味のある人が多くいる場合)。
そして、継続的に学ぶために自由に使える教育/研修手当を支給します。
こうすれば、専門的な教育を受けようと思ったときに管理職の承認を得る必要がないため、従業員はより自由に学ぶことができるのです。
6. 継続的な従業員エンゲージメント
従業員が自分の役割に落ち着いたら、今度は彼らが常に一生懸命仕事に取り組むようにしたいと考えますよね。
従業員エンゲージメントは、従業員同士をつなぎ、生産性を維持するために重要なものなのです。
社内イントラネットは、重要なメッセージやニュースを全従業員がスムーズに受け取るために重要な役割を果たします。
またこうした社内コミュニケーションは、全従業員が自分もチームの大切な一員であると感じられるようにするために、欠かせない役割を担っています。
7. 評価と報奨
従業員は単に給料がもらいたくて働いているわけではありません。
自分の仕事が評価されるかどうかも知りたいと思っているのです。
雇用主として、従業員と彼らの努力に感謝を示すためにできることがいくつかあります。
管理職や経営陣は、従業員に会ったときに声をかけるようにしましょう。
彼らの名前を覚え、仕事やそれ以外のことについて聞いてみてください。誰もが企業の単なる歯車の一つだと思われたくないと感じているはずです。
従業員への報奨は、必ずしも現金である必要はありません。
たとえば、プロジェクトやキャンペーンに尽力した従業員を社内報で表彰することもできます。
ほかにも有給を増やしたり、夜に映画鑑賞会を設けたり (勤務場所が異なるメンバーのためのバーチャル映画鑑賞会)、チームで好きなように外出させたりすることも可能です。
8. 成績評価とフィードバック
管理職は従業員と仕事の成績について話し合うために、どのくらいの頻度で個別面談を行っていますか?
またそれを年間行事として正式に組み込んでいますか?数ヶ月ごとに評価していますか?管理職が従業員の成績に対してフィードバックをしたら、次はどんなことをしていますか?
自分の仕事に対して肯定的なフィードバックがほしいというのは、誰もが思うことです。でも、改善点を聞くのは少し耳が痛いですよね。
成績評価の話し合いをしたあと、従業員に連絡を取り、改善の余地がある分野で手助けするために、彼らをフォローアップしている人は誰かいますか?難しい仕事をサポートするために、管理職は指導や研修を行っているでしょうか?
前向きな職場では、フィードバックは従業員が役職へと昇進するのをサポートするために行われます。
管理職であれば、従業員が一人前になり、仕事のあらゆる側面を学ぶまでには時間がかかることをわかっているはずです。
フィードバックというのは、従業員を罰したり、屈辱を与えたり、恥をかかせたりするために行われるものではないのです。
フィードバックには従業員エンゲージメント調査も含まれており、気になっていることについて、従業員が匿名で意見できます。
経営陣はこのフィードバックを慎重に検討し、従業員エクスペリエンスを向上させるチャンスだととらえなければなりません。
9. 成長のためのキャリアプランニング
従業員が企業に「落ち着き」、仕事にエンゲージする準備が整ったら、次はその方法を見つけなければなりません。
従業員はこの時点で、成長するために管理職と企業が自分に何を求めているのか知る必要があります。
従業員と管理職は、その従業員のキャリア目標について話し合い、それらを達成するための計画に着手しましょう。
従業員のなかには、単なるキャリアアップではなく、横方向のキャリアチェンジを希望する人もいるかもしれません。
このようなキャリア目標もまた、奨励されるべきです。
それは、時間の経過に伴い、人の置かれている状況やニーズが変化していく可能性があるからです。
従業員は社内の別のポジションに移っても、それまでと同様、生産的かつ積極的に役割を果たすことができるのです。
10. 従業員ジャーニーの終わり
従業員ジャーニーの最終段階は、従業員ごとに異なります。
採用されたポジションもしくはその企業自体に、単純に合わなかっただけの従業員もいます。
そのときは、仕事上ではうまく関係を築けないことを認め、その人が自分に合った企業に転職するのを認めてあげるのがベストかもしれません。
ほかには退職と同時に雇用関係を終える従業員もいますし、 転職や復学、家庭の都合といった理由で自ら辞める人もいます。
また、配偶者もしくはパートナーが、別の都市で良い仕事に採用され、家族で引っ越さなければならないという理由で辞める人もいます。
従業員と企業との関係が、それで完全に終わるとは限りません。
この従業員ジャーニーの最終段階に、慎重に対処することが大切です。退職する従業員でも、相談役やパートとしてなら働けるかもしれません。
また、転職するために辞めた従業員でも、状況が変われば戻ってきたいと思っている可能性があります。
彼らが円満退職だったのであれば、また新しい (そして異なる) 従業員ジャーニーをスタートしようと考えるのも理にかなっています。
その人はその企業の概要や価値観、ポリシーなどをすでにわかっているため、好都合なのです。
従業員のライフサイクル
効果的な従業員ジャーニーは、雇用主と従業員の関係における重要な瞬間が集まって構成されています。
従業員エクスペリエンスジャーニーマップがあれば、雇用主がその軌道に乗ることができます。
社内イントラネットは、この関係が両者にとってポジティブで生産的なものになるようサポートするうえで重要な役割を果たします。