インナーマーケティングで企業内部を活性化!手順や事例を解説

企業活動に大きな影響を与える要素の1つに、従業員一人一人の働きやチームワークがあります。それらをアップさせる方法は多数ありますが、昨今注目度が向上している方法が「インナーマーケティング」です。
インナーマーケティングは、一般的な「マーケティング」とは異なり、社外ユーザーではなく社内従業員に対して行います。従業員ロイヤリティの向上などを図ることが目的です。
しかし、具体的な手順やポイントがよくわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、インナーマーケティングの意味やメリットに加え、手順や事例も解説します。
インナーマーケティングとは
インナーマーケティングは、企業の従業員に向けて行われる戦略的活動です。
企業理念や行動指針の浸透・自社商品やブランド価値の理解促進を目的としており、社内文化の醸成や従業員のエンゲージメント向上にも寄与します。
通常のマーケティングが外部顧客向けであるのに対し、インナーマーケティングは社内の「従業員」を対象としているところが特徴です。
ここでは、インナーマーケティングの類語について、以下の3点を解説します。
- アウターマーケティング
- インナーブランディング
- アウターブランディング
1つずつ見ていきましょう。
アウターマーケティング
インナーマーケティングの類語の1つ目は、アウターマーケティングです。
アウターマーケティングは、企業が外部の顧客や取引先に向けて行う一般的なマーケティング活動です。市場調査から販売促進・広告宣伝まで、事業運営における対外的な施策全般が含まれます。
一般的に「マーケティング」という言葉を使用する場合は、このアウターマーケティングを指すことがほとんどです。
インナーブランディング
インナーマーケティングの類語の2つ目は、インナーブランディングです。
インナーブランディングは、企業理念やブランド価値を従業員に浸透させることを目的とした社内向け活動です。従業員がブランドに誇りをもち、自律的に業務に取り組める環境を作ることで、顧客満足度の向上や企業競争力の強化につながります。
全従業員が共通の目標に向かい、高い意識で取り組める組織づくりを目指すのがインナーブランディングです。
関連記事:インナーブランディングとは?アウターブランディングとの違いや成功事例などとともに解説
アウターブランディング
インナーマーケティングの類語の3つ目は、アウターブランディングです。
アウターブランディングは、企業のブランド価値を外部に向けて発信し、広めていく活動です。従来のブランディングがこれにあたり、インナーブランディングと対をなす概念として認識されています。
両者は発信対象が異なりますが、同一のブランド像を伝える役割を担っており、企業のブランド戦略の両輪として機能します。
インナーマーケティングのメリット
ここでは、インナーマーケティングのメリットについて、以下の2点を解説します。
- 従業員ロイヤリティの向上
- 組織パフォーマンスの向上
1つずつ見ていきましょう。
従業員ロイヤリティの向上
インナーマーケティングのメリットの1つ目は、従業員ロイヤリティの向上です。
インナーマーケティングは、従業員のロイヤリティ向上に重要な役割を果たしています。従業員ロイヤリティは会社への愛着や帰属意識のため、外部からの強制ではなく、自然な形で醸成されるものです。
インナーマーケティングを通じ、従業員は自社への理解を深め、自身の役割や必要性を実感できるでしょう。また、企業のために何をすべきかを自主的に考え、積極的に行動する姿勢も身につけられるでしょう。
このように、インナーマーケティングは従業員の自発的な理解と共感を促し、結果としてロイヤリティの向上につながるのです。
組織パフォーマンスの向上
インナーマーケティングのメリットの2つ目は、組織パフォーマンスの向上です。
組織のパフォーマンス向上においても、インナーマーケティングは大きな効果をもたらします。従業員個々の意識や姿勢の変化は、組織全体に波及効果をもたらすからです。
具体的には、従業員の自社への共感や愛着が強まることで企業への貢献意欲が高まり、組織全体の生産性向上につながります。従業員のロイヤリティ向上は離職率低下にも効果的です。
これにより採用・育成コストを抑制し、その分を事業展開に活用できれば、さらなる組織パフォーマンスの向上が期待できます。
関連記事:生産性向上は企業活動で重要!業務効率化との違いや手法も解説
インナーマーケティングを進める手順
ここでは、インナーマーケティングを進める手順について、以下の4点を解説します。
- セグメンテーション方法の決定
- コアターゲットの設定
- 自社ポジショニングの検討
- ブランド価値の決定
1つずつ見ていきましょう。
セグメンテーション方法の決定
インナーマーケティングを進める手順の1つ目は、セグメンテーション方法の決定です。
従業員の特性は多種多様で、効果的なアプローチのためには適切な区分けが欠かせません。例えば、以下の切り口によるセグメンテーションが考えられます。
▼セグメンテーションの切り口(一例)
- 地理的要素
- 年齢や性別などの客観的属性
- ライフスタイル
- 価値観
- 利用シーン
- 利用頻度
これらの軸を用いて、自社の従業員を適切にグループ分けしていくことで、より効果的なマーケティング施策の展開が可能です。
コアターゲットの設定
インナーマーケティングを進める手順の2つ目は、コアターゲットの設定です。
セグメンテーションで分類された各グループの中から、特に注力すべき対象を選定しましょう。その場合、インナーマーケティングはさまざまな従業員を相手にするため、コアターゲットに絞りすぎず、他のセグメントへの波及効果も考慮しなければなりません。
具体的な施策を展開するときは、まずコアターゲットに対して集中的にアプローチし、そこから組織全体への好影響を及ぼすシナリオを描くことが理想です。
自社ポジショニングの検討
インナーマーケティングを進める手順の3つ目は、自社ポジショニングの検討です。
自社のポジショニングを検討するプロセスでは、特にコアターゲットとして選定した従業員の視点を重視しなければなりません。主観的な分析だけでなく、外部評価や実態との整合性を確認しながら、自社の立ち位置を明確にしましょう。
自社ポジショニングの検討は、ブランド価値の決定に大きく影響するため、詳細な分析と慎重な判断が必要です。
ブランド価値の決定
インナーマーケティングを進める手順の4つ目は、ブランド価値の決定です。
最後に、これまでの分析結果に基づきブランド価値を決定します。
インナーマーケティングにおいても、アウターマーケティング同様、提供相手・提供価値・提供方法を考えなければなりません。ただし、アウターマーケティングとは異なり、従業員に対してやりがいや独自のメリットを提供することが目的です。
大切なことは、これまでの工程で得られた知見を活かしながら、組織全体で共感できるブランド価値を構築していくことです。
インナーマーケティングのポイント
ここでは、インナーマーケティングのポイントについて、以下の2点を解説します。
- フェーズごとの施策を明確化
- 事前のペルソナ設定
1つずつ見ていきましょう。
フェーズごとの施策を明確化
インナーマーケティングのポイントの1つ目は、フェーズごとの施策を明確化することです。
インナーマーケティングは、複数のフェーズを経ます。そのため、インナーマーケティングの施策が、どのフェーズにいる従業員に向けた施策かを明確化する必要ががあります。
例えば、多くの従業員同士がまだ十分な関係性を構築できていない状態では、経営理念に沿った行動を称賛するよう促されても、思うような効果は期待できません。
このような事態を防ぐため、現状の従業員の状態を正確に把握し、それに適した施策を選択することが重要です。
事前のペルソナ設定
インナーマーケティングのポイントの2つ目は、事前のペルソナ設定です。
施策フェーズを決め、対象となる従業員像をペルソナとしてある程度具体的にイメージしましょう。ポイントは、施策に対してやや消極的な反応を示すと想定される従業員こそ、ペルソナとして想定すべきことです。
例えば、意欲度を10段階で評価した場合、3程度の従業員をターゲットとして設定すれば、より実効性の高い施策を企画できます。
このようなペルソナ設定により、「どうすれば対象者が施策を活用してくれるか」具体的な視点をもって企画検討が可能となります。結果として幅広い従業員層に受け入れられる施策を作り出せるでしょう。
インナーマーケティングの活用事例
ここでは、インナーマーケティングの活用事例について、以下の1点を解説します。
飲食チェーンAは、広告費を抑える代わりに、人材育成に多くの時間と投資を行っていることで有名です。
その結果、スタッフ一人一人が顧客満足を重視する価値観をもち、自発的に質の高いサービスを提供できています。実際に働いていたスタッフからも、仕事への高いモチベーションや充実感が語られており、通常のアルバイトとは異なり、意識の高さが見られます。
このような従業員の生き生きとした姿勢や、やりがいをもって働く様子は、自然と顧客にも伝わります。結果として、高い顧客満足度とリピーター率につながるのです。
まとめ
今回は、インナーマーケティングの意味やメリットに加え、手順や事例も解説しました。
インナーマーケティングは企業の従業員に向けて行われる戦略的活動で、従業員ロイヤリティや組織パフォーマンスの向上がメリットです。インナーマーケティングを進めるには、セグメンテーション方法の決定からブランド価値の決定まで手順通り行う必要があります。
インナーマーケティングを成功させるには、フェーズごとの施策の明確化や事前のペルソナ設定が欠かせません。他社の事例も参考にして、自社でもインナーマーケティングを成功させましょう。