インナーブランディング・従業員エンゲージメント
更新日:
2025-03-25

従業員エクスペリエンスとは?向上させるメリットや事例などをまとめて解説

この記事を書いた人
Yuko Kobayashi
 < 一覧へ戻る
目次

企業活動で重要なリソースの1つに、ヒトがあります。リソースのヒトで外せないのが「従業員」です。従業員の働き方によって、企業活動が大きく左右されることは間違いないでしょう。

ただ、従業員も人間である以上、前向きな状態で仕事に取り組むことができなければ、十分な成果を出せなくても無理はありません。そこで大切になる概念が「従業員エクスペリエンス」です。

従業員エクスペリエンスを向上させることで、従業員を前向きな状態にしやすくなり、結果的に成果につなげやすくなるでしょう。

そこで今回は、従業員エクスペリエンスの意味や向上させる必要性に加え、向上させるためのポイントを解説します。

従業員エクスペリエンスの意味

従業員エクスペリエンス(EX)は、「従業員が企業で働く中で得られる体験・経験」を表す概念です。この考え方は、アメリカで生まれました。従業員の満足度や幸福度の向上を重視することで、生産性の向上や離職率の低下などの具体的な成果につなげることが狙いです。

ここでは、従業員エクスペリエンスの基礎知識について、以下の2点を解説します。

  • 従業員エンゲージメントとの違い
  • 必要とされる背景

1つずつ見ていきましょう。

従業員エンゲージメントとの違い

従業員エクスペリエンスの基礎知識の1つ目は、従業員エンゲージメントとの違いです。

従業員エクスペリエンスと従業員エンゲージメントは、似た概念としてよく比較されます。従業員エクスペリエンスが職場での体験から生まれる心理状態を指すのに対し、従業員エンゲージメントは組織への貢献意欲を意味します。

従業員エクスペリエンスが充実すると、従業員エンゲージメント向上にも寄与するでしょう。

必要とされる背景

従業員エクスペリエンスの基礎知識の2つ目は、従業員エクスペリエンスが必要とされる背景です。

ここでは、以下の4点を解説します。

  • 終身雇用の崩壊
  • 人手不足
  • 働き方改革
  • 口コミサイトの存在

1つずつ見ていきましょう。

終身雇用の崩壊

従業員エクスペリエンスが必要とされる背景の1つ目は、終身雇用の崩壊です。

日本ではかつて終身雇用制度が基本でしたが、今やキャリアを通じて複数の企業で働くことが一般的になってきました。従業員は自身の市場価値を高めるために、転職や柔軟な働き方をすることが当たり前の時代です。

企業は人材の定着率向上を目指し、従業員エクスペリエンスの充実に力を入れるケースが増えています。

人手不足

従業員エクスペリエンスが必要とされる背景の2つ目は、人手不足です。

日本では少子高齢化が進み、生産人口が減少しているため、多くの業界で人手不足が課題になっています。

人手不足の状況は従業員の負担増加や離職率の上昇につながりかねません。そのため、人材の確保と定着を目的として従業員エクスペリエンスの向上が重要視されているのです。

働き方改革

従業員エクスペリエンスが必要とされる背景の3つ目は、働き方改革です。

働き方改革の推進により長時間労働が制限され、限られた時間で高い生産性を実現することがより重要になっています。

そのため、企業は住宅手当や育休制度の充実、テレワークなどを進めて従業員エクスペリエンスを高めることで、従業員のモチベーションと生産性の向上を図っているのです。

口コミサイトの存在

従業員エクスペリエンスが必要とされる背景の4つ目は、口コミサイトの存在です。

口コミサイトの普及により、求職者は企業の評判や働き方に関する情報を入手しやすくなりました。求職者が注目するポイントの1つが、福利厚生や職場環境です。このような点に関する企業の評判は人材採用に直接影響します。

従業員エクスペリエンスの向上は、人材確保や企業ブランディングの観点から特に重要です。

従業員エクスペリエンスを向上させるメリット

ここでは、従業員エクスペリエンスを向上させるメリットについて、以下の4点を解説します。

  • 従業員のモチベーションアップ
  • 離職率の低下
  • 生産性の向上
  • 企業イメージの向上

1つずつ見ていきましょう。

従業員のモチベーションアップ

従業員エクスペリエンスを向上させるメリットの1つ目は、従業員のモチベーションアップです。

従業員エクスペリエンス向上により、各従業員の満足度とモチベーションを高められます。現代では、従業員が仕事に求める価値が多様化しており、単純な給与アップだけでは十分な効果が得られないケースも珍しくありません。

そのため、従業員個々の価値観を丁寧に理解し、それに応じた施策を講じていくことが重要になっているのです。

離職率の低下

従業員エクスペリエンスを向上させるメリットの2つ目は、離職率の低下です。

従業員エクスペリエンスの向上は、離職率の低下に寄与します。従業員が転職する理由は、労働条件・人間関係・給与など多岐に渡り、特定の理由だけではないことがほとんどです。
このことからも、従業員エクスペリエンスを包括的に向上させることが離職防止に効果的と考えられています。

生産性の向上

従業員エクスペリエンスを向上させるメリットの3つ目は、生産性の向上です。

生産性の向上も、従業員エクスペリエンスを向上させるメリットとして見逃せません。なぜなら、従業員の業務内容を理解し改善点を見出すプロセスそのものが、労働生産性の向上につながるからです。
実際、幸福度の高い従業員であれば、創造性・生産性・売上がいずれも向上するとの研究結果も出ています。

関連記事:生産性向上は企業活動で重要!業務効率化との違いや手法も解説

企業イメージの向上

従業員エクスペリエンスを向上させるメリットの4つ目は、企業イメージの向上です。

企業の従業員エクスペリエンスに向けた取り組みは、社内外に好印象を与えます。従業員の満足度が高まれば、インターネットやSNSでの好意的な発言も増加するため、企業イメージの向上につながります。
結果として、人材の定着率向上や優秀な人材の獲得にもプラスの効果を発揮するでしょう。

従業員エクスペリエンスを向上させるポイント

ここでは、従業員エクスペリエンスを向上させるポイントについて、以下の6点を解説します。

  • 従業員一人ひとりへの理解
  • 従業員の主体性を尊重
  • エンプロイジャーニーマップの作成
  • オフィス環境の改善
  • 従業員に関するデータ収集
  • 能力開発の機会創出

1つずつ見ていきましょう。

従業員一人ひとりへの理解

従業員エクスペリエンスを向上させるポイントの1つ目は、従業員一人ひとりへの理解です。

従業員エクスペリエンス向上のためには、従業員個々への理解が欠かせません。日常的にコミュニケーションを取ることに加え、定期的に面談・調査を実施することで、問題点や課題を早期に発見して適切に対応していきましょう。

従業員の主体性を尊重

従業員エクスペリエンスを向上させるポイントの2つ目は、従業員の主体性を尊重することです。

従業員エクスペリエンスを向上させるには、従業員自身の主体的な参加も欠かせません。経営層の想いだけで施策を進めると、かえって従業員の疎外感を生む恐れがあります。

従業員を巻き込んで施策に取り組むことで、より効果を実感できるでしょう。

エンプロイジャーニーマップの作成

従業員エクスペリエンスを向上させるポイントの3つ目は、エンプロイジャーニーマップの作成です。

エンプロイジャーニーマップを作成することで、職場で従業員がどのような体験をしているか可視化できます。
採用から退職までの流れで、従業員がどのような体験をし、どのような心情の変化があるかを具体的に把握できるため、より従業員の心情に寄り添った施策を立案できるでしょう。

オフィス環境の改善

従業員エクスペリエンスを向上させるポイントの4つ目は、オフィス環境の改善です。

快適なオフィス環境を提供すれば、従業員の創造性アップやコミュニケーション活性化につながります。
オフィスは一日の大半を過ごす場所なので、従業員が快適に過ごせる空間づくりを心がけることが欠かせません。

従業員に関するデータ収集

従業員エクスペリエンスを向上させるポイントの5つ目は、従業員に関するデータ収集です。

従業員の体験や要望を把握するには、定期的な調査やデータ収集が役立ちます。
従業員満足度調査などでデータを取得し、分析して、実践的な改善につなげましょう。

能力開発の機会創出

従業員エクスペリエンスを向上させるポイントの6つ目は、能力開発の機会創出です。

従業員の能力開発や学習などスキルアップの機会を設けることで、従業員の成長意欲を高められます。そのことが、会社への貢献意識を高める施策にもなります。資格取得支援や勉強会の開催なども効果的な施策です。

従業員エクスペリエンスの向上を試みた事例

ここでは、従業員エクスペリエンスの向上を試みた事例について、以下の2点を解説します。

  • ITサービスA
  • メーカーB

1つずつ見ていきましょう。

ITサービスA

従業員エクスペリエンスの向上を試みた事例の1つ目は、ITサービスAの事例です。

ITサービスAでは、従業員エクスペリエンスに関する部署を設置し、働きやすい環境づくりに注力しています。
特に新入従業員向けの「オンボーディングプロセス」に注力しており、企業目標・戦略・サービスに関する研修を通じて、新入従業員が速やかに職場に溶け込めるよう支援している点が特徴です。

メーカーB

従業員エクスペリエンスの向上を試みた事例の2つ目は、メーカーBの事例です。

メーカーBでは、各従業員に焦点を当てた独自の取り組みを実施しています。特に注目すべき施策は、各従業員に自身のエンプロイージャーニーを作成してもらう施策です。

これにより、従業員自身とマネージャーの双方が、キャリアの方向性や目標を明確に把握できます。その結果、個人の価値観と企業の施策とのマッチングが実現し、従業員満足度の向上につながりました。

まとめ

今回は、従業員エクスペリエンスの意味や向上させる必要性に加え、向上させるためのポイントを解説しました。

従業員エクスペリエンス(EX)は、「従業員が企業で働く中で得られる体験・経験」を表す概念で、人手不足などを背景に重視されてきています。

離職率の低下や生産性の向上などが、従業員エクスペリエンスのメリットです。従業員エクスペリエンスの向上を実現させるには、従業員一人ひとりに対する理解の向上やオフィス環境の改善などが役立ちます。

従業員エクスペリエンスを向上させた事例は多数あります。自社で取り入れられる方法があれば活用してみましょう。

お気軽にお問い合わせください
企業の社内コミュニケーション、従業員エンゲージメント、ナレッジマネージメントの改善のお手伝いをします。