インターナルマーケティングとは?メリットや具体的な施策について解説!
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市場環境の変化が激しくなる中で、自社のビジネス拡大に向けたマーケティング戦略の重要性が高まっています。
「企業と顧客」という関係性の中でマーケティング戦略を構築している企業が多い中、近年、「企業と従業員」の関係性に着目した「インターナルマーケティング」への注目が集まっています。
そこで今回は、インターナルマーケティングの概要や目的、具体的な施策や成功事例を解説します。
インターナルマーケティングの概要と目的
ここでは、インターナルマーケティングの概要と目的について解説します。
インターナルマーケティングとは
インターナルマーケティングとは、企業が従業員の「従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)」を向上させるために行う取り組みを指します。この活動を通じて従業員のモチベーションや働きやすさを高め、その結果、売上や利益の向上を目指します。
インターナルマーケティングを理解する上で欠かせないのが「サービスプロフィットチェーン」という概念です。このフレームワークでは、従業員満足度の向上が顧客満足度の向上につながり、最終的には企業の収益向上へと結びつくサイクルが示されています。
つまり、インターナルマーケティングは、サービスプロフィットチェーンの中で「従業員満足度を高める」役割を担う重要なマーケティング活動なのです。
インタラクティブマーケティングとの違い
インターナルマーケティングによって従業員満足度が向上すると、従業員が提供するサービスの質や顧客体験が向上し、結果的に顧客満足度の向上にもつながります。ここで重要な役割を果たすのが、顧客と直接接点を持つ従業員、通称「コンタクトパーソナル(CP:Contact Personal)」です。
コンタクトパーソナルが顧客に対して行う直接的なマーケティング活動は「インタラクティブマーケティング」と呼ばれます。インタラクティブマーケティングは、顧客とのコミュニケーションや接触を通じて顧客体験を高め、企業のブランド価値や信頼性を築く重要なマーケティング施策の1つです。
エクスターナルマーケティングとの違い
インターナルマーケティングが従業員を対象にしたマーケティング活動であるのに対し、エクスターナルマーケティングは顧客を対象とした対外的なマーケティング活動を指します。これは、自社の製品やサービスをどのように顧客に届け、購入してもらうかを計画・実行するプロセスです。
エクスターナルマーケティングでは、「4P(製品、価格、場所、プロモーション)」などのフレームワークを活用し、ターゲット顧客に最適なアプローチを設計します。エクスターナルマーケティングは、顧客満足度を高めるだけでなく、売上やブランド価値の向上にも直結する重要な施策です。
インナーブランディングとの違い
インターナルマーケティングと似た概念として「インナーブランディング」がありますが、両者には明確な違いがあります。
インナーブランディングは、自社の理念や製品・サービスの価値を社員に深く浸透させることを目的とした活動です。従業員がブランドを正しく理解することで、行動に一貫性が生まれ、その結果、顧客は商品やサービスの利用を通じて企業のブランド体験を感じ取れるようになります。これにより、ブランドイメージの確立を目指すのがインナーブランディングです。
一方、インターナルマーケティングは、従業員満足度(ES)の向上を主な目的としています。従業員を「内部顧客」として捉え、働きやすい環境や高いモチベーションを提供することで、最終的に企業全体の成果向上を目指す活動です。
まとめると、インナーブランディングは「ブランド価値の浸透」、インターナルマーケティングは「従業員満足度の向上」にそれぞれ重点を置いた施策です。
インターナルマーケティングを行う3つのメリット
インターナルマーケティングの主な目的は従業員満足度(ES)の向上ですが、その実施によって企業全体にどのような具体的なメリットがもたらされるのでしょうか。
ここでは、以下の3つのメリットについて詳しく解説します。
- 離職率の低下
- 生産性の向上
- 顧客満足度の向上
詳しく解説します。
離職率の低下
インターナルマーケティングを実施することで、従業員満足度(ES)が高まり、従業員の企業に対する愛着や信頼感が向上します。従業員が自分の仕事に価値を感じ、会社から適切に評価されていると実感できれば、働き続けたいという意欲が高まります。さらに、職場環境の改善や公正な評価制度の導入、キャリアアップの機会提供などが加わることで、従業員は将来に希望を持ちやすくなります。
離職率の低下は、単に従業員が会社を辞めないということにとどまりません。採用活動や新人研修にかかるコストを削減し、熟練した従業員が長く働くことで業務の効率化や企業の競争力向上にも寄与します。また、離職率が低い職場は安定感があり、組織全体の士気やチームワークも強化されます。
生産性やパフォーマンスの向上
従業員満足度が高い企業では、職場内の雰囲気が良くなり、従業員同士のコミュニケーションが活性化します。例えば、日常的な業務においても情報共有や意見交換がスムーズに行われるため、無駄な作業を減らし、業務プロセスを効率化できます。これにより、個人のパフォーマンスだけでなく、チーム全体の成果が向上します。
さらに、従業員がストレスを感じにくい職場環境では、創造性が発揮されやすくなります。社員が主体的に新しい提案を行ったり、課題に対して積極的に取り組むようになることで、イノベーションを生む土壌が育ちます。このような循環が、企業全体の成長を加速させる要因となるのです。
顧客満足度の向上
従業員満足度が向上すると、その効果は従業員の態度や行動に現れます。顧客と直接接する従業員が笑顔で対応し、親身に顧客のニーズに耳を傾けられるようになることで、顧客体験の質が飛躍的に向上します。また、従業員が会社のブランドやサービスに誇りを持っている場合、その情熱や信念は顧客に伝わり、企業全体のイメージ向上にもつながります。
「サービスプロフィットチェーン」の考え方によれば、満足した従業員が提供する高品質なサービスが、顧客満足度を引き上げ、その結果、顧客のロイヤリティやリピート率の向上をもたらします。これが売上や利益の増加を促進するだけでなく、企業のブランド力を強化し、新規顧客の獲得にもつながります。
顧客満足度の向上は、企業にとって競争優位性を確保する上で欠かせない要素です。満足した顧客が口コミやレビューを通じて他の潜在顧客を引き寄せる効果も期待できるため、企業の長期的な成長にとって非常に重要です。
インターナルマーケティングの3つの成功事例
これまで、インターナルマーケティングの目的やメリットについて解説してきました。ここでは、実際にどのような施策が行われ、どのような成果を上げたのか、具体的な事例をご紹介します。
航空会社の成功事例
ある航空会社では、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の一環として、従業員満足度向上を目的にワーケーション制度を導入しました。D&Iとは、多様なバックグラウンドを持つ従業員が働きやすい環境を整える施策です。
ワーケーション導入後の社内アンケートでは、以下の項目で大幅な改善が見られました。
- ストレス軽減:仕事に対するストレスが減少。
- 人間関係の向上:上司や同僚との関係が良好に。
- プライベートの充実:仕事と生活のバランスが向上。
- 勤続意欲の増加:企業へのロイヤリティが向上。
また、ワーケーションに加えて、業務効率化を目指したDX(デジタルトランスフォーメーション)施策も展開しました。これにより、残業時間の削減や働きやすい職場環境の構築が進み、従業員の満足度と生産性を大幅に向上させることができました。
アミューズメント施設の成功事例
あるアミューズメント施設では、従業員同士の交流促進と満足度向上を目的に、低価格で利用できる社員食堂を設置しました。この社員食堂では、施設内で提供されるフードを内製化し、低コストで実現しています。
- コミュニケーション活性化:社員食堂が交流の場となり、部署を超えたコミュニケーションが活発化。
- 従業員の健康支援:熱中症対策の導入や有給付与日数の増加など、働きやすい環境づくりを推進。
これらの施策により、従業員の健康状態が改善され、職場全体の雰囲気も向上しました。結果として、離職率の低下や業務の効率化が実現できました。
SaaS系企業の成功事例
あるSaaS企業では、従業員の多様な働き方を支援するため、柔軟な勤務制度を整備しました。具体的な施策として以下が挙げられます。
- 時短勤務:育児や介護のために働き方を調整可能に。
- フルリモート勤務:場所に縛られない働き方を提供。
- 副業OK:従業員の自己成長を促進。
これらの施策により、離職率が約30%から5%未満に劇的に改善しました。また、従業員が自主性を持って働ける環境が整い、企業全体の生産性を向上できました。
インターナルマーケティングの具体的な施策
最後にインターナルマーケティングを効果的に進めるための具体的な施策として、以下の3点を解説します。
- ビジョンやミッション・事業戦略の浸透
- 働きやすい職場環境の整備
- 社内コミュニケーションツールの活用
ビジョンやミッション・事業戦略の共有
企業の方向性を明確に示し、従業員が自分の役割とその貢献を理解できる環境を整えることは、インターナルマーケティングにおいて極めて重要です。これにより、従業員は会社の目標に対する共感を深め、モチベーションやエンゲージメントが向上します。
具体的には、全体会議やタウンホールミーティングを開催し、ビジョンやミッションを直接共有することが効果的です。また、イントラネットや専用のデジタルツールを活用し、事業戦略を従業員がいつでもアクセスできる形で公開する仕組みを整えることも重要です。このような取り組みにより、従業員は自身の業務が会社全体の目標達成にどのように寄与しているかを理解しやすくなり、日々の仕事への意識や取り組み方が変わります。
結果として、従業員が会社の方向性に共感し、組織全体の一体感が強化されることで、企業のパフォーマンス向上にも寄与します。このような施策は、単なる目標の共有にとどまらず、組織の文化や価値観を深く根付かせるための重要なステップといえるでしょう。
働きやすい職場環境の整備
職場環境を充実させ、従業員が快適に働ける環境を整えることは、従業員の健康維持と生産性の向上において極めて重要です。ストレスを最小限に抑え、業務に集中できる環境を提供することで、社員の満足度を高めるだけでなく、企業全体のパフォーマンス向上にもつながります。
具体的な取り組みとしては、オフィスの物理的な快適性の向上が挙げられます。例えば、空調や照明の最適化、座席配置の工夫、リラックスできる休憩スペースの設置などが効果的です。また、柔軟な働き方を可能にするリモートワーク制度の導入も有効です。場所や時間に縛られずに働ける環境を提供することで、社員のワークライフバランスを支援し、満足度を向上させることができます。
さらに、業務効率を高めるためのデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進も欠かせません。無駄な手間を省き、業務を効率化するためのデジタルツールを導入することで、社員は重要な業務により多くの時間を割けるようになります。
このように、職場環境を整えることは、短期的な快適さの提供だけでなく、長期的な健康維持と業務効率の向上にも寄与します。結果として、従業員が高いモチベーションを持ち、企業全体の成長を支える力となるでしょう。
社内コミュニケーションツールの活用
社内コミュニケーションを円滑にし、情報共有を活性化させるためには、デジタルツールの活用が欠かせません。従業員同士のつながりを深め、業務効率を高める仕組みを整えることで、企業全体の生産性や一体感が向上します。
そのための具体的な手段として、リアルタイムでの情報交換が可能なプラットフォームの導入が挙げられます。社内コミュニケーションツールは、チーム内外で迅速な情報共有を実現し、コミュニケーションを効率化します。また、従業員のスキル向上を目的としたトレーニング動画や研修コンテンツを簡単に視聴・共有できる仕組みを提供することで、従業員の成長を支援します。
さらに、従業員の活動状況や関心をデータ化することで、施策の効果を把握しやすくなります。このデータをもとに、より効果的な施策を展開することが可能です。
まとめ
本記事では、インターナルマーケティングの概要、目的、そして具体的な施策について詳しく解説しました。企業が売上や利益を向上させるためには、従業員満足度を高めることが欠かせません。従業員を「内部顧客」として捉え、彼らの満足度を向上させる視点を持つことで、結果的に顧客満足度の向上や企業の成長につながります。
従業員満足度を向上させるためには、ビジョンやミッションの共有、職場環境の改善、そしてコミュニケーションツールの活用など、さまざまな施策を検討する必要があります。しかし、どれだけ具体的なアイデアがあっても、それを実行に移すための環境が整っていなかったり、施策の効果を検証する仕組みが不足していたりする場合、成果を上げるのは難しいものです。
そのような課題を解決するために「LumApps」は有効な手段です。LumAppsは、情報共有やコミュニケーションを円滑にし、従業員エンゲージメントを高めるためのツールです。
インターナルマーケティングの成功は、従業員満足度の向上だけでなく、企業の持続的な成長にもつながります。これを機に、自社に適した施策やツールを導入し、従業員が働きやすい環境を整えることを目指してみてはいかがでしょうか。